2021年03月08日

ジャズ喫茶

若いころからジャズは好きだが、ジャズ喫茶にはそれほど行ったことがない。20代のころ、わたしがいた会社には、ほとんど毎日、会社帰りに渋谷のジャズ喫茶に寄るという「猛者」がいたが、わたしがジャズ喫茶に行った回数は数えるほどである。 

  

覚えているのは新宿の「DUG」。靖国通り沿い、紀伊国屋書店の裏にある店である。いまは地下だけらしいが、わたしが行ったのは上の階も使っていたころで、当時まだ学生だったわたしは、恐る恐る入ってみた。ジャズ喫茶というと、客はみな無言で眉間にしわを寄せながらジャズに聴き入るという印象だが、「DUG」はそうでもなく、ほっとした記憶がある。それと、やはり学生時代に京都旅行の際に訪れた熊野神社前の「YAMATOYA」。薄暗い店内は重厚な内装で、とても落ち着く店だった。妻と数年前に再訪すると、店は改装していた。店内はかなり明るくなっていたが、壁一面のLPレコードに当時の面影を残していた。 

オンサヤコーヒー
「オンサヤコーヒー表町店」の2階客席。


こんなことを思い出したのは、先日、「オンサヤコーヒー表町店」を訪れたからである。「オンサヤコーヒー」は岡山に4店舗を展開する自家焙煎のカフェで、わたしたちはここの「問屋町店」は利用したことがある。「問屋町店」はいまどきのカフェだ。余計なものがないすっきりした内装で、サードウェーブといったらいいのだろうか、厳選した豆で淹れたコーヒーを提供する。 

  

一方、「オンサヤコーヒー表町店」は独特である。注文カウンターといくつかの席がある1階は特に変わったところのないカフェだが、狭い階段を上って2階に行くと別世界が広がっている。薄暗い室内、ゆったり座れるソファー、それぞれの席には小さなスタンドがあり、本をその下に持ってゆけば、周りを気にせずに読書に没頭できる。 

  

わたしと妻がここを訪れたのは、近くのヘアーサロンで妻が髪をカットしてヘアードネーション(小児がんなどで頭髪を失った子どものために、寄付された髪の毛でウィッグを作り無償で提供する活動)を行うためである。ヘアーサロンの予約の時間には少し間があったので、わたしと妻は「オンサヤコーヒー表町店」の2階席でコーヒーを飲み、妻がヘアーサロンに行っているあいだ、わたしはここで待つことにした。わたしは「本日のコーヒー」から1杯目はスマトラ、待つあいだにお替わりした2杯目はエチオピアを注文した。スマトラは適度な苦みがあり、エチオピアはあっさりした中に甘みが感じられた。どちらも、とてもおいしかった。 

  

これほどゆっくりとコーヒーを飲み、本を読むのは久しぶりだ。これでジャズがそれなりの音量で鳴っていれば、まるっきり「昭和のジャズ喫茶」である。しかし、立派な音響設備から流れるのは音を絞った静かな音楽だった。これはこれで心地いい。 



y1_tokita at 12:00|PermalinkComments(0)カフェ | 瀬戸内暮らし