2020年04月06日
備前片上ひなめぐり
わたしには生まれ年で6年(5学年)違いの姉がいるが、わたしが幼いころ、家に雛壇を飾って雛祭りを祝っていた記憶はない。雛人形があったとしても、核家族の狭小住宅では飾る場所がなかったのだろう。最近のアパート・マンション暮らしの家族でも事情は同じらしく、飾るとしても内裏雛(男雛と女雛)だけの場合が多いようだ。
より古そうなものもあった。趣がある。
そんななかにあって、地域に残る雛人形を屋内外に一斉に飾って雛祭りを祝おうというイベントがお隣の備前市で毎年行われている。「備前片上ひなめぐり」というもので、今年で20回になるそうだ。このイベントのことをわたしは知らなかったのだが、たまたま店にいらしたお客さんがチラシをくれて知るところとなった。3月3日はたまたま店の定休日だったので、妻と一緒に出かけてみることにした。
今年は新型コロナウイルスの影響で、さまざまなイベントや集会が中止されている。「備前片上ひなめぐり」でもメインの行事である宇佐八幡宮の石段ひな飾りや20周年記念イベントの十二単お服上げ(十二単の着付け)、片上おひなの花道(商店街50メートルの道の中央に雛人形を並べる)などが中止になってしまった。
わたしはてっきり催しすべてが中止になってしまったのかと思い、当日朝、主催者に電話で問い合わせてみた。すると、人が集まるようなイベントは中止になったけれど、店々、家々では雛人形を飾っていて見ることができるし、メイン会場の展示は開催しているということだったので行ってみることにした。
イベント中止の知らせを知ってだろう、会場近くの駐車場もがら空きなら商店街にも人はまばらだった。しかし、電話で聞いた通り、商店街の通りに面して家々が趣向を凝らした雛壇飾りを展示している。メイン会場の「ふくわらふれあい広場」というスペースには、立派な雛壇がいくつも飾ってあった。ここでわたしたちは甘酒をごちそうになり、さまざまな時代の雛人形を鑑賞した。
何と言っても目を引いた(驚いた)のは「御殿雛」である。雛人形というと男雛、女雛の背後には金の屏風があるというイメージだが、御殿雛ではまさに御殿が設えてある。会場の方に聞いたところ、昭和30年代くらいまではこのような雛飾りがよくあったそうだ。人形たちや調度品同様、建物も細部まで精巧につくられたまさにドールハウスである。
こんなものがウチにあったら楽しいだろうな、と思ってしまうが、会場の方によると、「みなさん、ウチのも引き取ってくださいって次から次に持っていらっしゃるんですよ」とのこと。どこにしまっておくかという問題もあるだろうし、現代の住宅事情に合わないことは間違いないようだ。