2023年02月20日
ユーミン万歳!
ユーミンの歌を初めて耳にしたのはいつごろだろうか。松任谷由実(結婚までは荒井由実)がデビューしたのは1970年代前半だが、ブームになったのは70年代半ばである。当時、中学生・高校生だったわたしは、テレビ・ラジオや街角でユーミンの歌を聴いているはずである。
その後、ユーミンは圧倒的な、しかも安定した人気を得て国民的な歌手になっていく。最初は若者からの支持が中心だったと思うが、何しろ息が長い。昨年(2022年)リリースしたデビュー50周年記念ベストアルバム『ユーミン万歳!』はオリコンのアルバムチャートで1位を記録したが、1970年代からはじまって1980年代、1990年代、2000年代、2010年代、2020年代の6年代にわたってアルバム1位を獲得したアーティストは、後にも先にもユーミンだけである。ユーミンと同世代の当初からのファンもいまや60代後半になっている。
そのユーミンには、わたしにとって興味深い側面がある。彼女は共演したキーボード奏者の松任谷正隆と比較的若くして結婚するのだが、結婚と同時に歌手としての名前も松任谷由実に変えてしまう。今でもそうだが、女性が結婚したら夫の姓に改姓することが多いとはいえ、売れている歌手がそういう理由で芸名を変えることは少ないだろう。ずいぶん古風だなーと思った記憶がある。
このことについてユーミン自身は、最近のインタビューで、アーティストにとって名前は重要で、自分にとっては旧姓よりも夫の姓のほうが良く思えたというようなことを語っている。よくある名字の「荒井」よりも、珍しい名字で何となく重みを感じさせる「松任谷」のほうがしっくりきたということか。
松任谷正隆のほうは、すこし前の姜尚中との対談のなかで、妻のユーミンばかりがスポットライトを浴びて自分が陰に隠れてしまうことに対する不満を述べていた。ユーミンにそのことを言うと、「わたしたちはチームなんだから」と一蹴されたという。
確かにそうだ。松任谷正隆はただのバックミュージシャンではなくユーミンの歌を支える編曲者でありプロデューサーである。「ユーミン」の半分は松任谷正隆であり、ふたりでひとつのチームなのだろう。そこでハタと気づいた。「松任谷由実」とは「松任谷正隆」と「荒井由実」のユニット名なのではないだろうか。「ユーミン」はひとりではないのである。