2019年02月28日
熱いおしぼりをどうぞ!
お店などで出される熱々のおしぼりが好きだ。ゆっくり手をぬぐうと、気分までがさっぱりする。おしぼりには、単に手を洗うことの代用以上の効用があるように思う。
客人におしぼりを供することは、日本発祥のおもてなしだそうだ。もともとは公家が客人を家に招く際に濡れた布を出していたらしい。江戸時代の旅籠で泊り客に桶の水と手ぬぐいが出されるシーンは時代劇などでおなじみだ。このとき手ぬぐいを絞ることが「おしぼり」の語源だともいわれている。
昭和のころの喫茶店では、客が席に着くとまず水の入ったグラスとホカホカのおしぼりが出された。おしぼりで顔を拭いたり首筋をぬぐったりすると「おじさーん!」と顰蹙を買ったものだ。店は自分のところで洗濯するのでは間に合わず、貸しおしぼりを使った。街には毎日、貸しおしぼり業者のクルマが頻繁に往来していた。
そのおしぼりが、いつのころからか紙製や不織布製の使い捨てになっていった。おしぼりを提供する立場になってみると、この切り替えはよくわかる。紙おしぼりのほうが断然安いのである。貸しおしぼりだと、月に500本まででだいたい5,000円から6,000円の業者が多いようだ。1本あたり10円台である。一方、紙おしぼりだと、まとめ買いをすれば1本2円台からある。紙おしぼりは、貸しおしぼりと違って配送業者との受け渡しやタオルウォーマーで温めるなどの手間もいらない。使い捨てのほうが、「完全に清潔」であることを求める時代の風潮とも合っているのかもしれない。
しかしわたしは、紙や不織布でできたペラペラのおしぼりはどうも好きになれない。衛生上の観点から、やむを得ず使うものですよ、という感じがぬぐえない(紙おしぼりを使っている同業者のみなさん、すみません)。これは気分の問題だからどうしようもない。
そこで「カフェ明治屋」では、基本的に紙おしぼりは使わず、綿の蒸しタオルをおしぼりとして提供している。このおしぼりは、前に書いたようにタオルの町・今治まで買い出しに行って購入したものだ。