2019年04月
2019年04月28日
瀬戸内移住2周年!
東京から瀬戸内に移住して、この4月末で2年になる。1年前のこのブログで、「あっという間だった気もするし、まだ1年しか経っていないのか、という気もする」と書いたが、それから1年経っても感じ方は同じである。満員電車に揺られて通勤していたのは遠い昔のような気がする一方、移住してからの月日は瞬く間に過ぎたように感じる。おそらくこの2年ほどのあいだ、私たち夫婦にとってはいろいろなことがありすぎたのだろう。
移住してからの半年間はカフェの準備期間に充てた。客席の柱や天井に柿渋を塗り、壁を漆喰で埋め、自分たちの部屋では床板を張った。お客さん用のイスやテーブルもすべて自分たちで組み立てた。もちろん、わたしたちにできないところは業者さんにやってもらったが、カフェと住まいを自分たちでつくっているという充実感があった。
しかし、1年半前にカフェをオープンすると、わたしたちに移住生活を心から楽しむ余裕はなくなった。わたしたちの生活は、すべてがお店を中心に回るようになった。このブログで過去にも書いた通り(カフェの時間割(その1)、(その2))、朝5時に起きて夜11時か12時に寝るまでほとんど働き詰めだ。火曜と水曜の休みも、午後は仕込みで手いっぱいだ。この3月から第2木曜日も定休日にしたことで、やっと月に1回の三連休ができたが、お店のことが頭から離れず、結局、3日とも仕事をしていたりする。
それで思い出したのだが、牛窓に「てれやカフェ」という店がある。前にこのブログで紹介したときには海沿いの道路に面したところにあったが、昨年(2018年)、近くの小山の中腹に移転オープンした。移転後、一度ランチどきに行ってみたが、陽当たりのいい、ほのぼのとした空間になっており心が和んだ。何より、店のご主人と奥さん(たぶん)があくせくしていない。手が空くとご主人は「ちょっと2階に行ってくる」と奥さんに言って階段を上がった。2階は海の見える客席に改修中だそうだ。わたしたちが店を出るとき、奥さんは玄関脇の花壇の手入れをしていた。のんびりしているというと失礼かもしれないが、お二人が暮らしを楽しんでいることが感じられ、こちらまで心がほっこり緩む気がした。この力を抜いた感じをわたしたちも見習わなければ。
2019年04月23日
花の命は短くて・・・(その2)
前回、4月10日の雨に触れ、「これで桜も散ったことだろう」と書いたが、そうでもなかった。岡山県は広い。店の定休日前日の15日にテレビのローカルニュースで「がいせん桜は今、八分咲です」と言っているのを妻が耳にした。さっそくネットを見た妻は、なかなかよさそうだという。ただ、場所が岡山県の最北部。行ってみたいけど、遠いからあきらめた、ということらしい。
ちょっと待った。わたしの出かけ好きを甘く見てもらっては困る。遠かろうが何だろうが、同じ岡山県ではないか。日帰りで行けないはずはない。調べてみると、「がいせん桜」は真庭郡新庄村(しんじょうそん)というところにあった。
新庄村というのは岡山県内に2つだけ残っている村の1つで(もう1つは英田郡西粟倉村)、県の西北部、鳥取県との県境にある。人口953人(384世帯)と県内で最も人口の少ない自治体で、「村民一家族の村」を謳っている。古くは出雲街道の宿場街「新庄宿」として栄え、旧出雲街道は今も当時の面影を残す風情ある通りとなっている。毛無山を主峰とする1000m級の連山に囲まれ、岡山県三大河川のひとつ旭川の源流域でもある。新庄村は「日本で最も美しい村」連合にも加盟している(以上、新庄村のウェブサイトおよびWikipediaから)。
新庄川を渡り、漆喰壁の古い建物のあいだの小路を通って通りに出ると、突然、目の前にわっと桜が現れた。「がいせん桜」である。前日のニュースのせいか、けっこうな人出だ。
旧出雲街道の「新庄宿」であったこのあたりでは、日露戦争の戦勝を記念して街道沿いに桜が植えられた。凱旋の桜である。いまでも、宿場の本陣を中心に数メートルおきに130本余りの桜がよく手入れをされた状態で残っており、この時期、街道を桜の隧道にするのだ。
わたしたちは、通りの端から端までをゆっくりと歩いた。途中、参勤交代の松江藩の一行が泊まったという脇本陣の内部を見学したり、いい匂いに誘われて地元のおばちゃんたちがつくる「だんご汁」や「ぜんざい」をいただいたり・・・。この日はほんとうに暖かないい日よりで、「わざわざ来てよかったなぁ」としみじみ思った。
岡山県は瀬戸内海に面した温暖な南部から北の豪雪地帯まで寒暖差のある土地柄だ。おかげで、わたしたちは3週にわたって桜を楽しむことができた。少し足をのばせば、生保会社のかつてのCMではないが、「♪花の命はけっこう長い」のだ。
2019年04月18日
花の命は短くて・・・(その1)
わたしたち夫婦は一昨年(2017年)の桜がすでに散った4月末に移住してきたから、岡山で桜の季節を迎えるのは今年で2回目である。昨年は、このブログに書いたように倉敷の酒津公園で桜を堪能した。
3月27日には全国で一番早く東京で桜が満開になった。同じ日に岡山市でも桜の開花が発表された。1週間後の4月2日と3日が店の定休日だ。満開の桜を期待して、4月2日、瀬戸内市内の桜の名所、大平山に行ってみた。ここには「岡山いこいの村」という宿泊施設があり、その周辺には約2,500本の桜が植えられている。ソメイヨシノだけでなく、シダレザクラ、オオシマザクラ、ヤエザクラなどが時期をずらして開花するのがここの特徴とのことだ。この日、ソメイヨシノは3~4分咲きだった。瀬戸内の多島美を背景にした満開の桜を期待していたので少々がっかりしたが、青空をバックに咲く可憐な花は美しかった。
牛窓の沿岸なら桜がもっと咲いているかもしれないと思い、山を下りて牛窓港へ向かった。めざす先はこのブログでも前に書いた金毘羅宮である。そこは、牛窓のレトロな通り「しおまち唐琴通り」沿いの小山の上にあるお宮で、牛窓の海の景色が見渡せる。ここに何本かの桜の木があるのに目をつけていたのだ。「唐琴通り」から脇にそれ、階段を少し上って金毘羅宮に着いてみると、桜は数輪が開花した程度で、まだ早かった。残念。
1週間後の4月9日、岡山市内に用があって出かけたついでに、もう桜は散り始めているかもしれないと思いつつ岡山後楽園に行ってみた。正解だった。駐車場わきの旭川の土手の桜並木が満開だ。この日は晴天で風もなく、桜が青空に映える。河原では花見をしながらバーベキューをしている人たちもいる。
園内に入ると、岡山城の天守閣をバックに桜が咲き誇っている。近づくと、隣接する竹林と満開の桜のコントラストが面白かった。圧巻は約50本の桜からなる桜林で、離れて見ると、一帯が一塊の白雲のように見える。桜林の中に入ると、桜の木一本一本が岡山後楽園のほかの木同様、よく手入れされているのがわかる。桜林の地面は芝生で、この日は大勢の家族連れや旅行客(海外からも)が腰を下ろして花見を楽しんでいた。
翌4月10日は一日中冷たい雨が降る日だった。これで桜も散ったことだろう。毎年のことではあるが、花の命は短い。
2019年04月12日
岡山のセルフスタイルカフェ
カフェをやっていると、やはり他店の様子が気になる。とくに、「カフェ明治屋」と同じような個人経営の店は個性的なところが多く、初めての店に行くときには、どんな店だろうかと心が浮き立つ。実際、行ってみて「いい店だなぁー」「勉強になるなぁー」と思うカフェも多く、そのうちの何店かはこのブログでも紹介した(「気になるカフェ」「気になるカフェ(その2)」など)。一方で、そのような「個人商店」を脅かしつつあるのがスターバックスコーヒーなどのセルフスタイルカフェだ。
岡山のセルフスタイルカフェは、ドトールコーヒー、スターバックスコーヒー、タリーズコーヒーなどが岡山市、倉敷市を中心にそれぞれ数店舗ずつある。たいていは駅の構内か、でなければショッピングモールや病院などに入っている。移動はクルマという人が多いので、ほとんどの店が駐車場を利用できる場所にあるという点を除けば、当然だが東京にあるそれぞれのチェーン店と店のつくりやメニューに大きな違いはない。ドトール岡山駅店の奥まった喫煙席でコーヒーを飲んでいると、窓もないのでここが東京なのか岡山なのか、目に入るものからはわからない。
そんななかにあって、東京にはないセルフスタイルカフェを見つけた。サンマルクカフェの岡山今店という店だ。岡山市の中心部から数キロ離れてはいるが、とにかく敷地が広く店も広い。駐車場が41台分、客席は114席ある。驚いたのはそのサービスで、主要な雑誌がずらりとそろえてあるだけでなく、自由に使えるデスクトップパソコンが2台置いてある。さらに、何と立派なマッサージチェアが3台、まるで温泉旅館のごとく並んでいる。
この店は昨年(2018年)リニューアルし、それまで喫煙席だったエリアを「ワークルーム」にした。各席が仕切りで区切られた半個室空間になっており、Wi-Fi、コンセント完備だ。じっくり腰を落ち着けて勉強や仕事をどうぞ、というわけである。回転率を上げるために「長時間のお勉強はご遠慮ください」などと掲示する店もあるなかで、思い切った決断だと思う。
同じサンマルクカフェでも繁華街の岡山表町店はふつうの店だったから、この店は郊外型店舗として違った形態をとるということなのだろう。もしかしたら、他店舗に新しいやり方を導入するかどうかの試験的な意味合いもあるのかもしれない。
これだけ至れり尽くせりで、食事と一緒ならコーヒー1杯が180円だ(14時まで。税別)。セルフスタイルカフェ恐るべし、である。
2019年04月05日
食材仕入れのはなし
「カフェ明治屋」をオープンするちょっと前まで、わたしたちは食材の仕入れをどうするか、まったく考えを持っていなかった。クルマで5分、10分のあたりにスーパーマーケットは何軒かあるし、農協の直売所もある。わたしたちは、どこが安くて良いもの、新鮮なものを売っているか見て回ったりしていた。しかし、スーパーマーケットなどは店の定休日には利用できても営業日にそうそう出向くわけにはいかない。何しろ営業中は二人いないと店が回らないし閉店後は後かたづけと翌日の仕込みで二人とも大忙しなのだ。
いまでも定休日には店の食材をいろいろと買うが、定休日の大量買いだけで1週間持たせるのには無理がある。どうしたものかと困っているところに、救いの手はひょんなところから現れた。
きっかけはレタスだった。妻がネットか何かで見たプラント生産の無農薬レタスを店で使いたいと言い出した。倉敷で生産しているその会社に連絡を取ると、営業マンがサンプルを持って店に来てくれた。取引は直でもいいが、青果卸業者を通した方が何かと便利だという。その青果卸がその後、店に野菜を入れてくれることになるS社である。店にやってきたS社の営業マンは流通のことをいろいろと教えてくれ、総合食品卸のI社を紹介してくれた。冷凍食品から調味料、コメなど広く扱っている会社である。S社の営業マンは、横のつながりでI社の営業部長に直接電話してくれ、その人がサンプルを持って何度も店を訪ねてくれた。
さらにS社の紹介で精肉卸のH社を知ることになった。牛乳と生クリームは近所のN商店が配達してくれる。これでコメ、肉、野菜や調味料、牛乳など店で必要になる食材はあらかたそろうことになった。鮮魚は前にも書いた通り、定休日に備前海の駅の魚市場などで購入すればいい。
思いがけないところから卸業者さんたちのネットワークを知ることができてよかった。オープンまでにそのどこかに引っかからなかったら、いまごろ定休日はメモを見ながらの大量の買い出しでつぶれてしまうところだった。