瀬戸内暮らし

2018年01月22日

浜屋のみっちゃん

岡山はフルーツ王国として名を馳せているが、岡山の冬の味覚といえば牡蠣ではないだろうか。わたしはこちらに来るまで知らなかったが、岡山県は牡蠣の養殖量が広島、宮城に次いで第3位である。とくに「カフェ明治屋」からクルマで3040分のところにある備前市の日生(ひなせ)という地区は牡蠣の養殖で有名だ。そして「日生のカキオコ」でも。 

  

「カキオコ」とは、その名の通り牡蠣のお好み焼きのこと。広島に焼きそばが入った「広島風お好み焼き」があるように(広島県人は「広島風」と言われるのを嫌うらしいが)、「カキオコ」は牡蠣の養殖地ならではの地域色豊かなお好み焼きである。日生は漁港を中心とした小さな町だが、15軒以上のお好み焼き屋がある。そして、10月末から出荷が始まった牡蠣は冬場が最盛期。わたしたちも、一度は「カキオコ」を食べてみようと出かけてみた。 

みなとの見える丘公園から
日生の「みなとの見える丘公園」からは瀬戸内海と島々が見渡せる。


出向いたお店は「お好み焼き
 浜屋」。だけどここは、「みっちゃん」で通っているらしい。ちなみに日生のお好み焼き屋には、ほかにも「タマちゃん」や「さんちゃん」がある。縄のれんの居酒屋のようで親しみが持てる。 

お好み焼き浜屋
「お好み焼き 浜屋」。のれんにも「みっちゃん」とある。


それはともかく、のれんをくぐって店に入ると、あら、びっくり。店にテーブルなるものは存在しない。
8畳ほどの広さの土間の真ん中に作り付けの鉄板がデーンと鎮座している。客はその周りを取り囲んで3方に並ぶ。スツールに7人腰掛ければいっぱいだ。わたしたちが座っていいものかどうかとまどっていると、鉄板上で忙しく調理しているおばちゃんに「カキオコ2枚?」と訊かれた。「はい」と答えるしかない。あとで知ったのだが、ここのカキオコは1枚が大きく、たとえば女性3人のグループだと、親切に「カキオコ2枚にしとく?」と訊かれたりするらしい。 

浜屋のカキオコ
キャベツの上にごっそりと牡蠣が載る。

カキオコ完成

「カキオコ」が完成。とにかくうまい。 

  

何とか席に着き、目の前で自分たちのカキオコが焼かれるのを見る。延ばした生地にキャベツを投入、そこへ大量の牡蠣が載る。それをひっくり返すのだが、牡蠣が必ず1つ、2つこぼれ落ちる。それをコテで引き戻し、焼き色がついた上面にソースを塗って完成。わたしたちの前に1つずつ寄せながら、おばちゃんは「はい。食べてください」とやさしく言うのだった。さらに、「ソースが足りなかったら言ってください」という気配りも。初めてだったからわからなかったが、わたしのはソースが少なかったらしく、おばちゃんは「ソースを足そうねぇ」と言うなりどぼどぼとかけてくれた。 

  

さて、一口。うまい! 思わず「おいしいねぇ」と声に出してしまった。小ぶりの牡蠣は味が良く、それが大量に入っている。心底、幸せな気分になる。1枚は大きかったが、妻が食べきれなかった分を含めてぺろりと食べてしまった。 

  

おばちゃんの手がすいたところで、「今年の牡蠣はどうですか?」と訊いてみる。おばちゃんは「なかなかいいねぇ」と笑うのだった。ところで、もう一人のキャラクターであるおじちゃんはどうしているかというと、ほとんど口をきかない。状況を見ながらキャベツを切り、客に水と小皿・コテ・箸を差し出し、帰った客の前の鉄板をコテでガシガシと掃除する。動きに無駄がない。おじちゃんとおばちゃん、二人の阿吽の呼吸でこの店はスムーズに回転している。見習いたいものだ。 

  

ところで、「みっちゃん」とは、おじちゃんのことだろうか、おばちゃんのことだろうか。 



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2018年01月18日

「隠れ家カフェ」からまなぶ

「カフェ明治屋」のご近所にあるカフェ牛窓のカフェ(とくに「珈琲 べるま~ど」)については前にも記したが、今回はもう少し離れたところにある個性的なカフェを紹介したい。岡山市内や倉敷市内には魅力的なカフェがたくさんあるが、わたしたちは休日には都市部よりも山間部の日帰り温泉に行くことが多く、とくに湯郷温泉にはほとんど毎週のようにかよっているので、どうしてもそちら方面ということになる。 

  

Asato

Asatoの庭とエントランス。人里を離れ静かだ。


まずは和気町にある
Asato(アサト)。アサトとは、ここの看板犬の名前である。標高400メートルの山の中の一軒家で、ナビがなければ到底たどり着けないようなところにある。建物は、築約60年の古民家だ。ご夫婦で営業しており、ランチは予約制である。ふらりと寄ったわたしたちは、コーヒーだけをいただいた。 

  

ここのご主人は広島県在住で、休みのたびにここに通い、数年がかりでコツコツと改修されたそうだ。店内の柱や鴨居はオイルステインが塗られ良い感じに仕上がっている。客席の床板もご自身で張ったというから驚く。2010年にオープンしてからは、週の半分を自宅で、半分をここで過ごしながら生活しているそうだ。オープンから8年、「山の中の隠れ家カフェ」として人気が定着しているようだ。 

Kimamacafe
Kimamacafeからは広い空と山が眺められる。


もう1軒は、まさしく湯郷温泉への行き帰りの道で、路傍に小さな看板があることで気づいた。板に手書きの文字で「隠れ家カフェ Kimamacafe」とある。気になって、何度目かに通ったとき、矢印の方向へ行ってみた。ところどころの案内表示に従って山里の道を行く。行き止まりまで行くと、そこに一軒家のカフェがあった。 

  

Kimamacafeは女性オーナーがひとりでやっている店である。以前は都市部でお勤めだったそうだが、実家(それがいまのKimamacafeの場所)でお父様の看病をし、看取ったあと、ここに住み続けながらカフェをすることにしたそうだ。オープンは2012年で、わたしたちが見た看板を出してからは、わたしたちのようにふらりと寄るお客さんも増えたそうだ。もとのお仕事(輸入雑貨商)や趣味とも関係しているのだろうが、店内には各地から取り寄せたさまざまな雑貨が展示・販売されており華やかだ。 

  

ここではランチをいただきながら、話好きのオーナーからいろいろな話を聞いた。わたしたちがカフェを始めることにも大変興味を示してくださり、実際、開店してから間もなく「カフェ明治屋」のランチタイムに訪れてくれた。 

  

多くのカフェがオープンしては店じまいをしていくなかで、6年、8年とつづくにはそれなりの理由がある。AsatoKimamacafeの共通点は「隠れ家カフェ」ということだけではない。店主が自然体なのだ。小さく始めて、少しずつ口コミが広がるのを待つ。けっして焦らず、淡々と店をつづけていく。簡単なようで難しいことだと思う。わたしたちも、この姿勢にまなびたい。 



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2018年01月06日

瀬戸内は寒い!

東京からの移住先を選定するとき、わたしはいくつかの条件を考えた。そのなかには東京より寒くないことも含まれていた。岡山県の県南・瀬戸内市に決めたのは、地震などの天災が少ないこともあるが、東京より温暖な気候だろうという思いがあったからである。 

  

ところがである(岡山弁だと「ところがじゃー!」と言うところなのだろうが)、実感として瀬戸内は東京より寒い。「カフェ明治屋」の客席は、この時期、夜中の3時からエアコンをかけていても7時の開店時になかなか18度、20度まで上がらない。エアコンがない廊下などは、通るだけでブルブル震えるほどである(わたしは、「シベリアン廊下」と呼んでいる)。 

カーブミラー
「カフェ明治屋」の前。カーブミラーも霜で真っ白。


もちろん、これは「カフェ明治屋」が古民家であるということが大きく影響している。昔の家は、「家の作りやうは、夏をむねとすべし」という徒然草の教えに従って、夏に涼しい(冬に寒い)ようにできている。「カフェ明治屋」も、あちこちに隙間が空いていて、外からの風が入ってくる。これでは寒くてたまらない。「冬はいかなる所にも住まる」(徒然草)というわけにはいかないのである。
 

  

そこでわたしたちは、とにかく隙間をひとつずつ埋めていくことにした。隙間テープやコーキング剤、目立たないところはプチプチシートやガムテープで塞いだ。窓ガラスに断熱シートを貼ったりもした。少しは違うのだろうが、気休め程度のようで、やはり寒い。 

  

うちだけが寒いのかと思っていたら、そうでもないようだ。ご近所の方もお客さんも、みなさん「寒いねぇ」と言っている。実際、朝方の気温は、氷点下になっている。昼間も10度に届かなかったりする。 

  

テレビの天気予報で東京の気温と比べてみると、岡山のほうが低い日も多い。東京だけが小春日和という日もある。いまになって思うと、東京は暖かかったのだ。しかもわたしたちは、東京では鉄筋コンクリート造りの集合住宅に住んでいた。暖房が効かないわけがない。 

  

東京より南に移住してのこの寒さに、妻からは「話が違う」と言われてしまった。しかし、沖縄などを除けば、たいていのところは東京より寒いのかもしれない。 



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2018年01月02日

激動の1年が過ぎて

新年あけましておめでとうございます。年末年始はいかがお過ごしだろうか。「カフェ明治屋」は1230日から14日までの6日間を休みとした。サラリーマン時代の休暇よりは短いが、お客様商売の店としては長いほう。開店から2カ月でやっと取れたまとまった休みである。 

2018初日の出
瀬戸内市内の美和神社からの初日の出。大きな太陽だった。

正通寺鐘撞

さかのぼって前日、日付が変わるころに正通寺で鐘を撞く。 

  

東京にいたころは、年末になると、初詣はどこに行こうかとあれこれ思案したものだ。川崎大師に行ったり成田山新勝寺に詣でたり、箱根神社まで足を延ばしたり。しかし今年はせっかく休養できる休みだ。何も予定を立てずにゆっくり過ごすことにした。  

  

なにしろ家の真ん前がお寺だから、あえて初詣のために遠出をしなくてもいい。このお寺(正通寺)は、日ごろは鐘を鳴らすことはないが、除夜の鐘だけは撞く。しかも、参詣人に撞かせてくれる。わたしと妻も撞かせてもらい、そのまま参拝した。願ったのはもちろん無病息災、家内安全、商売繫盛・・・欲張りすぎか。 

  

2017年は生活が一変した年だった。人生の曲がり角だったといってもいい。2017年の正月は東京で迎えた。まだ会社勤めをしていた。4月に会社を退職し瀬戸内に引っ越した。移り住んだ家をおもに自分たちで改装し、11月にカフェをオープンした。それから2カ月、がむしゃらに働き、なんとか2018年を迎えることができた。 

  

2018年はどんな年になるだろう。まったく見当がつかない。全力投球しているときには周りが見えないように、カフェを軌道に乗せるという目標に全身全霊をかけている今は、ほかのことが目に入らない。 

  

ただ、東京でお世話なったある人の言葉を忘れないようにしよう。その人は、こう言っていた。

「知らない場所で一から商売するのは大変かと思いますが、心を込めて料理を作り、楽しんでやると、それが伝染していきますから大変でもやがて実を結びます。お客さんに喜んでもらう。この姿勢で挑めば大丈夫ですよ」

 お客さんを第一に考える。楽しみながら笑顔で過ごす。この姿勢でこの一年を乗り切ろう。  

  

【追伸】 

毎年、仕事でお世話になっている方々に年賀のメールを出してきましたが、今年はこのブログで代えさせていただきます。悪しからずご了承ください。 



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2017年12月17日

パン屋とそば屋

東京にいたころ、自宅から近いひばりヶ丘の行きつけのそば屋とパン屋について以前書いた。そこに、「東京に未練はないが、(行きつけの店に)行けなくなるのがつらい。新天地で新しい『名店』を見つけよう」と記した。 

  

そして、そば屋とパン屋についていえば、見つけた。まずはそば屋。牛窓の高台にある「ちょい蕎麦庵」という店だ。関西・香川に近く、うどん文化圏の岡山にあって、江戸東京のそばの味を提供している。そばは一日限定20食で売り切れ御免。11時半開店だが、12時ころまでに行かないとなくなる恐れがある。 

ちょい蕎麦庵
「ちょい蕎麦庵」は、こぢんまりした店だが、落ち着ける。


席に着いて注文すると、まず揚げ蕎麦が出される。カリカリのスナック菓子のようで手が止まらない。つづいて先付け。かまぼこや漬物など
4品ほどが並ぶ。そばはざるそばのみで、日によって変わるが、東北地方などから取り寄せたもの23種から選ぶ。腰があって野趣に富むもの、白くて繊細なものなどそれぞれに特徴がありどれも絶品である。薬味はワサビではなく辛味大根で、これは、ひばりヶ丘の「たなか」と同じだ。このざるそばが1600円、お代わり400円という安さに驚く。 

オぷスト
「オぷスト」は、店の看板からして手作りだ。


パン屋はひょんなことから見つかった。前に紹介したカフェユクリで食べたサンドイッチのパンがおいしかったので、妻がお店の方にどこのパンか訊いたら、「オぷスト」だと教えてくれた。調べると、同じ長船町内にある小さなパン屋である。天然酵母パンと焼き菓子の店とある。さっそく、わたしたちはここのパンを試してみた。ここの山型食パンは粘り気が強く、わりとしっかりしている。焼くと香ばしく、表面はカリッとした仕上がりになる。わたしたちは二人とも、ここのパンが気に入った。それからは、わたしたちの朝食は必ず「オぷスト」のパンである。
 

  

そばとパン。わたしたちが好きなものの「名店」が新天地で見つかってよかった。そしてパンについていえば、わたしたち二人が食べているだけではない。「カフェ明治屋」のモーニングサービスのパンは「オぷスト」の天然酵母パンである。 



y1_tokita at 10:22|PermalinkComments(1)